(1)とにかく高速に (2)同時サンプリングしたい (3)プリトリガ機能が必要
(4)高精度が必要 (5)多チャンネル入力が必要 (6)いろいろな信号を入力したい

アナログ信号入力仕様は多種・多様で、あちらを立てればこちらが立たずも
よくある話、用途に合わせた使い分け/組み合わせが必要です。
以下、順に説明します。

(1)高速にAD変換したい。/2MHzまで(当社製品の限度)に限った話です/

表−(1).PCIバス高速AD変換ボード一覧
製品名 分解能 入力数 最高サンプル速度 特徴、差別機能
ADM-670PCI 14bit 4ch 2MHz(2ch), 1MHz(4ch) 各ch専用AD変換器(同時サンプル)
ADM-676PCI 16bit 16ch 200KHz(5μs/ch) 各chごとに別々の入力範囲設定可能
ADM-677PCI 16bit 48ch 100KHz(10μs/ch) 各chごとに別々の入力範囲設定可能
ADM-680xPCI 12bit 8ch 256KHz(4μs/ch)
ADM-681PCI 14bit 16ch 1MHz(1μs/ch)
ADM-682zPCI 12bit 16ch 256KHz(4μs/ch) 雑音除去、入力をカスタマイズ可能
ADM-686zPCI 16bit 16ch 200KHz(5μs/ch) 雑音除去、入力をカスタマイズ可能
ADM-687zPCI 16bit 32ch 200KHz(5μs/ch) 雑音除去
ADM-688PCI 14bit 8ch 1+(1μs/ch) 各ch専用S/H回路(同時サンプル)
ADS-0128aK 16bit 128ch 200KHz(5μs/ch) 最大1024入力まで増設可能

■最高峰はADM−670PCI、各入力ごとに専用のAD変換回路を配して同時動作します。
特筆はバッファメモリのツイン構成(FIFO&RAM)です。 サンプリングされたADデータは
両メモリに同時書き込みされます。 これにより、エンドレス・リングバッファ(RAM)を使用
したプリトリガ動作中にFIFOバッファから現状(間引き可能)をモニタするようなプログラムが
可能になります。 当然、各入力ごとに別々の入力範囲を(ソフト)設定してもクロストークは
発生しません。
ADM−670PCI以外は入力切り替え型のAD変換なので実際の使用チャンネル数に比例
してサンプリング速度が低下するほか、チャンネル間クロストークの問題/下記(4)で説明/が
あることを考慮のうえで、特徴・差別機能・価格から選択してください。
パソコンへのADデータ転送速度はWINDOWS2000/XP環境で当社提供のハンドラ
関数&WDMドライバを使用した場合(:特定機での実測値)は以下のとおりでした。
P4/1.8GHz機で1MHz以上、P3/1GHz機で900KHz以上、P2/400MHz機で300KHz以下、
なお、旧WINDOWS95/98/ME環境ではハンドラ関数DLLがデバイスドライバを介さず
ハードウエアに直接アクセスできるためP2/400MHz機でも1MHz以上を実現しています。
最新のパソコンで普通の用途なら1MHzサンプリングまで大容量バッファやバスマスタ機能が
不要になったようですが、マルチタスク性の強い制御や長時間データ収集などのときは、
OSを含むシステム要素に左右されないFIFOバッファメモリの増設が有効な場合があります。
(当社製ADMシリーズ各機は全て大容量FIFOメモリの増設が可能です。)

(2)同時サンプリングしたい。
標準で同時サンプリング機能を持つ機種は表−(1)からADM−670/688PCIですが、
その他の機種も(ADS−0128Kを除き)同時サンプリング機能を外付けできます。 また、
ADM−682z/686zPCIには専用オンボードオプションの4ch同時サンプルユニットが
用意されています。

(3)プリトリガ機能が必要なとき
ADM−670PCIはハード的にサポートされています。
その他の機種は直接サポートされていませんが、提供される専用ハンドラ関数の管理する
データバッファをエンドレス・リング状に設定することができますから、アプリケーション上で
ソフト的に実現することは可能です。

(4)高精度が必要なとき
高精度は高速性と反する仕様です。
高速性を謳うADボードを採用するときは特に吟味が必要になります。
さて、
パソコン用ボードは箱モノ測定器と違い不特定のシステムに組み込まれる“部品”の性格
から厳密には絶対正確度を保証できませんから、製造メーカーとしては構造・特性・素性・
出荷時の調整環境などを明示する責任があると(当社は)考えています。
当社では通常、以下の特性を明示しています。
なおADボード業界では本来、分解能を意味する“精度”が“正確度”の意味に使用される
ことが多いので当社でも以下区別せず説明します。
■入力数、■分解能、■入力範囲、■入力インピーダンス、■CMRR(差動のとき)、
クロストーク、■最高サンプリング速度、■入力切り替え(スキャン)速度
非直線性、■正確度(精度)、■内部雑音(ばらつき)、■温度ドリフト、■データコード。
最も注意すべきは赤字で記した項目です。
一般に非直線性はそのボードで使用しているAD変換素子の性能で、誤差=0の標準
電圧源に照らすことができる場合の校正限度に近いものです。 一方、正確度の方は
調整のとき実際に使用した標準電圧源の誤差を含む現実的な値です。
次に(隣接チャンネル間)クロストークですが、これは入力切り替えに使用される素子の
性能と入力切り替え(スキャン)速度に依存します。 切り替え(スキャン)速度が速いほど
クロストークは大きくなるので、低速ADボードの方が良い結果となります。
高速ADボードでクロストークを改善するには入力切り替え回路に高性能(高速)素子を
使用すること、また各入力ごとに専用のバッファアンプで低インピーダンス変換してから
切り替えるなどの配慮が必要です。
特に問題になるのは複数チャンネル切り替え型16ビットADボードの高速化です。
結論から言うと1MHzは無理、500KHzも控えたい、200KHz程度が限度です。
詳細は最近、実機でテストした測定値と説明を御覧ください。

ソフト制御によるチャンネル別のゲイン設定・レンジ設定なども同様の問題をはらんで
おり、入力切り替え型の高速ADボードでは慎重な設計が必要な部分です。
現実的対策(1)
必要な仕様を満足する中から“遅いボード”を選ぶと良いかもしれません。
価格も安いと思われますし。 高速は低速を兼ねないこともあるのです。
現実的対策(2)
当社も含めて多くのメーカーには購入前評価用の貸し出し制度がありますから
お手元でテストするのが一番です。
現実的対策(3)=当社希望>
16ビット/200KHzまでなら当社製ADM−686z/687zPCIも検討してください。
両機に使用している高速マルチプレクサ素子は市販品中最高速で、隣接チャンネル間
クロストークは−82dBが得られます。
中速の用途では独自のハード的雑音除去機能が効果を発揮、さらに被測定信号源の
インピーダンスが高かったり、信号接続ケーブルが長い場合はオンボードオプションの
各チャンネル個別バッファアンプモジュールの決め手まで用意されています。

隣接チャンネル間クロストークによるゴースト発生の様子/ADM-686zPCI
(測定条件)
信号源インピーダンス=10Ω以下、
レンジ:±10v、切り替え速度:5μs/ch

■左上はチャンネル0に入力された±10v、
■左下はチャンネル1(0v入力)に現れた
ゴースト:約±1mv(これは優秀な値!)
■右下はチャンネル1入力を本ボード独自の
自動マルチサンプル&平均機能で5回処理
されたデータ。(雑音が約1/3に減少。)

(5)多チャンネル入力が必要なときは
入力切り替え型AD変換ボードの入力チャンネル数を制限するのはコネクタです。
理想的なアナログ入力信号の接続は各チャンネルごとにツイストペア線を使用したい
ので、コネクタには1入力当り2ピン(ホット、GND)を隣接して割り当てるのが理想に
なります。(当社製品は全てそうです。)
PCIボードのパネル面に装着できる一般的なコネクタはハーフピッチでも100ピン
程度ですから、1ボード当りの入力数は(当社製品では)最大48チャンネルです。
128チャンネル機:ADS−0128aKの場合はアナログ入力切り替え部を外部に
分離して本体PCIボードとケーブル接続する構造にすることで制約を逃れています。
(入力切り替え部を128チャンネル単位で最大1024チャンネルまで増設可能)
またADボードのクロック入出力接続で複数ボードを同期運転する方法もあります。
この場合、各ボードは最高速で動作できますが、(1)高速にAD変換したいの項で
述べたPCIバスのデータ転送速度(可能なデータ流速)が大量データを収集するときの
制限要素になります。/バッファメモリ拡張で解決することもあります。/

(6)いろいろな信号を入力したい
この種の話で一番多いのは入力チャンネルごとに異なる入力範囲にソフト設定したい
という場合です。 当社でもADM−676/677PCIで実現していますが、前記(4)
末尾でも触れたように高速スキャンと相反する仕様で、汎用のPGAアンプを使用した
ラフな設計では精度が出ず、コストとスペースの必要な回路を使うことになります。
次に多いのは、
数mv〜数100mvという低レベル入力の場合です。
一般的なADボードで利用できる標準の低レンジは±2.5v程度で、PGA付ADボード
ではもっと低レンジもありますが、S/Nや精度が犠牲になるため万能ではありません。
低レベル信号入力から高品質のADデータを得る手段として各チャンネルごとに専用の
絶縁アンプを配すると良結果が期待できますが、1チャンネル当り¥2万円以上します。
±10vを超える高電圧信号も困りものです。
普通のアナログ回路は±15vの電源で動作し、正確に処理できる信号は±10v以内
です。 なお、電源電圧(±15v)を超える信号が印加されると素子破壊の原因になり
ますが、当社製ADボードは全て各アナログ入力端に±35vまでの保護回路が付いて
います。 異常入力ではない±10vを超える信号を測定するときは通常、抵抗分圧で
±10v以下に落しますが、ADボード側から見たインピーダンスが上るのでバッファで
インピーダンスを下げてからADボードに接続しないと(次に説明する)問題が起ります。
上記の回路をモジュール化した市販品も低レベル入力と同様に高コストです。
■ポテンショメータのようなインピーダンスの高い信号源も注意が必要です。
一般の複数チャンネル切り替え型AD変換ボードでは各入力をマルチプレクサ素子で
切り替えた後にバッファアンプ→入力範囲設定→(S/H付)AD変換器の回路構成
ですが、インピーダンスの高い信号源は(浮遊容量が持っている)前チャンネル信号の
残留電荷を解消して自からの値にセトリングする時間が長くなります。
そのため高速でチャンネルを切り替えられると前チャンネルのゴーストが乗った値を
AD変換してしまいます。(クロストークの発生です。)
解決策はバッファアンプで低インピーダンス化してからADボードに接続することです。
(追伸)
当社製ADM−682z/686zPCIのアナログ入力は、
モジュール化(標準出荷状態はストレート接続)されており、任意のユーザ回路を追加
実装できる構造です。 またオプションでチャンネル個別バッファアンプ、ゲインアンプ、
分圧バッファアンプ、同時サンプルホールドなどのオンボードモジュールが用意されて
います。 これらのモジュールは入力切り替え前のシグナルコンディショニングなので
ADボードの高速スキャンによる信号品質(精度、クロストーク)の悪化に加担しません。

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